ツルハホールディングス解説|ウエルシア統合と成長戦略
はじめに
ドラッグストア業界は、少子高齢化や医療費抑制の流れを背景に「地域の健康インフラ」としての役割がますます重要になっています。さらに、日用品や食品を取り扱う総合型店舗として生活密着度を高め、景気変動に左右されにくい安定成長が期待されています。
その中で ツルハホールディングス(ツルハドラッグ) は、全国規模で店舗を展開し、株主優待制度を導入している点で個人投資家から高い注目を集めています。加えて、2025年にはイオングループのウエルシアHDとの経営統合を発表し、国内最大のドラッグストアチェーンとして新たなステージに進もうとしています。
企業紹介
ツルハホールディングス(3391)は北海道発のドラッグストア大手で、全国に「ツルハドラッグ」を展開。2025年12月1日、イオン傘下のウエルシアHD(3141)と経営統合し、売上高約2兆3,000億円、店舗数約5,600店の国内最大グループとなりました
なぜウエルシアと経営統合したの?
まず、統合の背景は国内市場の成熟と海外展開強化です。
- 国内は人口減少で成長余地が限られるため、規模拡大による調達コスト削減・物流効率化が不可欠。
- イオンのASEANネットワークを活用し、ツルハのタイ・ベトナム、ウエルシアのシンガポールなどで海外展開を加速。
- さらに、介護・調剤事業を強化し「ライフストア」への進化を目指しています
ウエルシアとの経営統合で今後の株価はどうなる?
次に、株価への影響です。
- 統合直後は「株式交換比率」や「のれん代」への懸念から株価は乱高下しやすい。
- しかし、3年間で500億円のシナジー効果を見込んでおり、長期的には利益率改善が期待されます。
- 海外展開とPB強化が進めば、株価は安定的に上昇余地あり。
ドラッグストア業界での立ち位置はどうなる?
さらに、業界構造の変化です。
- 統合後のツルハホールディングスは国内シェア25%超を握り、マツモトキヨシHDやサンドラッグを大きく引き離しました。
- 世界的にも売上規模で「ドラッグストア世界6位」に浮上し、海外市場での存在感を高めています。
ウエルシア株を持っていた人はどうなる?
まず、株式交換に賛成した株主は、2025年11月27日のウエルシアHD上場廃止に伴い、保有していたウエルシア株がツルハホールディングス株へと交換されました。これにより、統合後はツルハホールディングス株主として新体制に参加し、ツルハホールディングスの株主優待制度や配当を受けられる立場になります。つまり、賛成派は「国内最大のドラッグストアグループの株主」として、今後の成長メリットを享受できるのです。
一方で、株式交換に反対した株主には株式買取請求制度が適用されます。反対株主は公正価格での買取を請求することが可能で、現金化という選択肢を取ることになります。ただし、実際には大半の株主が交換に応じており、反対派は少数派にとどまっています。
したがって、ウエルシア株を持っていた人は「ツルハホールディングス株主として統合後のメリットを享受する」か「公正価格で現金化する」かの二択となり、基本的にはツルハ株主への転換が主流です。
ウエルシアの優待はどうなる?
次に、株主優待です。
- ウエルシアHDの優待(Tポイント付与)は廃止され、ツルハホールディングスの優待制度に一本化される見通し。
- ツルハ優待は「株主優待カード(5%割引)」+「ギフト券(2,500円~)」で実用性が高く、長期保有優遇もあります。
ツルハホールディングス(3391)株主優待内容
| 保有株数 | 優待内容 | 年間合計(参考) |
|---|---|---|
| 100株以上 | 株主優待カード(ツルハグループ各店で5%割引) | 割引利用分に応じて変動 |
| 100株以上 | 株主ギフト券(2,500円分)または自社PB商品・北海道グルメ・蜂蜜などと交換可能 | 2,500円分相当 |
| 1,000株以上 | 株主ギフト券(5,000円分)または交換商品 | 5,000円分相当 |
| 2,000株以上 | 株主ギフト券(10,000円分)または交換商品 | 10,000円分相当 |
| 長期保有(3年以上・100株以上) | 追加で株主ギフト券1,000円分贈呈 | +1,000円分 |
企業概要
グループ全体の事業構造(持株会社の役割)
- ツルハホールディングス(3391)は純粋持株会社であり、グループ各社の経営管理を担っています。
- ミッション:「お客様の生活に豊かさと余裕を提供する」
- 経営理念:「地域密着」「健康サポート」「持続的成長」
主な子会社・事業セグメント
ドラッグストア事業
- ブランド例:「ツルハドラッグ」「くすりの福太郎」「レデイ薬局」「ウォンツ」「杏林堂」「B&Dドラッグストア」など。
- 全国規模で直営・FC店舗を展開。2025年時点でグループ全体で約2,500店舗規模。
調剤事業
- 店舗併設型の調剤薬局を拡充。高齢化社会に対応し、医療インフラとしての役割を強化。
通信販売事業
- グループECサイト「ツルハグループe-shop」を運営。PB商品や日用品をオンライン販売。
グループサポート事業
- 物流・人材育成・システム開発など、店舗運営を支える基盤事業。
売上・利益のセグメント別比率(2025年2月期)
| 事業セグメント | 売上高(百万円) | 売上構成比率 | 営業利益(百万円) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|
| ドラッグストア事業 | 約7,800,000 | 約92% | 約340,000 | 4.4% |
| 調剤事業 | 約500,000 | 約6% | 約30,000 | 6.0% |
| 通販・その他 | 約156,000 | 約2% | 約8,000 | 5.1% |
| 合計 | 約8,456,000 | 100% | 約378,940 | 4.5% |
数字から見る課題
ドラッグストア事業
- 売上の約9割を占める基幹事業。
- 利益率は4%台と低め。競争激化や人件費増が収益を圧迫。
調剤事業
- 利益率は比較的高いが、規模はまだ限定的。
- 医療制度改定の影響を受けやすい。
通販・その他
- 成長余地はあるが、売上規模は小さい。
- EC競合との競争が課題。
全体
- 売上高は約8,400億円規模。
- 営業利益は黒字を維持しているが、利益率は低水準。
- コスト構造改善とデジタル戦略が今後の重要テーマ。
財務分析
売上高・営業利益・純利益の推移(過去5年程度)
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 純利益 |
|---|---|---|---|
| 2021年5月期 | 約8,200億円 | 約400億円 | 約250億円 |
| 2022年5月期 | 約8,500億円 | 約390億円 | 約240億円 |
| 2023年5月期 | 約8,700億円 | 約370億円 | 約220億円 |
| 2024年5月期 | 約8,800億円 | 約360億円 | 約210億円 |
| 2025年5月期(予想) | 約9,000億円 | 約370億円 | 約220億円 |
売上は右肩上がりで拡大しているものの、利益はやや減少傾向。競争激化や人件費増が収益性を圧迫しており、利益率改善が課題。
財務健全性(自己資本比率、負債比率)
| 指標 | 数値 | 説明 |
|---|---|---|
| 自己資本比率 | 約45%(2024年時点) | 小売業としては健全水準。財務基盤は安定。 |
| 負債比率 | 有利子負債は一定水準 | 店舗拡大や物流投資に伴い借入依存度はやや高め。 |
| ROE(自己資本利益率) | 9%(2021年)→6%(2024年) | 利益率低下により資本効率は悪化傾向。 |
| 配当性向 | 約25% | 優待と併用で株主還元を実施。 |
| PER | 約22倍(2025年11月時点) | 業界平均並みでやや割高感。 |
| PBR | 約1.5倍 | 純資産に対してやや高め。 |
| ROE | 約6% | 収益性は限定的で改善余地あり。 |
※PBRについては、下記の記事で説明しています。
https://miyacci-yutaikabublog.com/2025/10/29/post-83/
※PERについては、下記の記事で説明しています。
https://miyacci-yutaikabublog.com/2025/10/29/post-90/
※ROEについては、下記の記事で説明しています。
https://miyacci-yutaikabublog.com/2025/11/02/post-107/
キャッシュフローの特徴(営業・投資・財務CF)
| 区分 | 特徴 | 説明 |
|---|---|---|
| 営業CF | プラス継続 | 安定的に黒字を維持。日用品需要に支えられ安定性が高い。 |
| 投資CF | マイナス継続 | 新規出店・物流センター整備・デジタル投資が続き、先行投資が重い。 |
| 財務CF | 借入依存 | 借入金の増減が大きく、資金繰りを補うための調達が目立つ。 |
事業戦略・強み
各事業の競争優位性
まず、ドラッグストア事業では「ツルハドラッグ」「くすりの福太郎」「レデイ薬局」「ウォンツ」など全国規模で展開する多ブランドを持ち、地域密着型の店舗運営で幅広い顧客層を獲得しています。調剤併設型店舗を拡充することで、高齢化社会に対応した医療インフラとしての役割も強化しています。
次に、プライベートブランド(PB)事業では医薬品・日用品・食品まで幅広い自社商品を展開。株主優待品としても提供され、ブランド認知度を高めると同時に、収益性改善に寄与しています。
さらに、デジタル事業では購買履歴やポイントカードを活用したCRMを強化。アプリやECサイトを通じて顧客接点を拡大し、オンラインとオフラインの融合を進めています。
M&A・新規事業
一方で、ツルハホールディングスは積極的なM&A戦略を展開してきました。地域ドラッグストアの買収や統合を進め、スケールメリットを活かした仕入れ力・物流効率化を実現。さらに、ウエルシアHDとの経営統合により、国内最大のドラッグストアグループとして業界再編を主導しています。
新規事業としては、介護・健康サポート事業やオンライン診療連携を強化し、「地域の健康インフラ」としての役割を拡大しています。
海外展開や成長市場への取り組み
海外展開
最後に、海外展開についてはアジアを中心に進行中です。具体的には、タイやベトナムで店舗展開を進めており、さらにイオンのASEANネットワークを活用することで成長余地を広げています。その結果、グローバル市場での存在感を高める動きが加速しています。
国内施策
一方で、国内では調剤併設型店舗や食品強化型店舗を拡充し、加えて生活密着型の「ライフストア」への進化を目指しています。したがって、地域社会に根差した健康・生活支援の拠点としての役割が強化されつつあります。
成長市場への取り組み
さらに、成長市場への取り組みとしては、健康食品・介護用品・オンラインサービスを拡充しています。これにより、ドラッグストア依存からの脱却を図り、より多角的な収益基盤の確立を進めているのです。
リスク要因
| 区分 | 内容 | 説明 |
|---|---|---|
| 業界特有のリスク | 規制・調剤報酬改定・競争激化 | 医療制度改定や価格競争が収益を圧迫する可能性がある。 |
| グループ内の依存度 | ドラッグストア事業への依存 | 売上の約9割をドラッグストア事業が占めており、特定ブランドへの依存度が高い。 |
| 外部環境 | 人件費・物流費・国際情勢 | 最低賃金上昇や物流費高騰、国際情勢の不安定化による海外展開リスクが懸念される。 |
今後の展望
1. 経営統合によるスケールメリット
- 2025年12月にウエルシアHDと統合し、売上高約2兆3,000億円・国内店舗数約5,600店の日本最大ドラッグストアグループが誕生。
- ナショナルブランド商品の共同調達を進め、ツルハホールディングスは3年間で500億円規模の統合効果を見込む。
- 物流・システム統合により、仕入れ原価の低減や効率化を図る。
2. 新プライベートブランド(PB)の展開
- 両社のPBを統合し、新ブランド「からだとくらしに、+1」を2026年春にスタート予定。
- 医薬品・日用品・食品まで幅広く展開し、利益率改善とブランド力強化を狙う。
3. 海外展開の加速
- イオングループのASEANネットワークを活用し、タイ・ベトナム・シンガポールなどで店舗拡大。
- 世界的にも売上規模で「ドラッグストア世界6位」に浮上し、海外市場での存在感を高める。
4. 介護・ヘルスケア事業の強化
- 高齢化社会に対応し、介護用品・在宅医療サポートを拡充。
- 「ドラッグストアからライフストアへ」というビジョンを掲げ、健康・介護・生活支援を一体化したインフラ企業を目指す。
5. 中期計画と数値目標
- 2026年2月期には売上高1.1兆円・営業利益510億円を計画。
- 店舗数は120店増を予定し、収益性を優先したスクラップ&ビルド戦略を継続。
まとめ
ツルハホールディングスは、まず全国規模で展開するドラッグストア事業を基盤とし、さらに調剤・プライベートブランド(PB)・デジタル戦略を組み合わせた多角的な収益構造を強みとしています。加えて、2025年にウエルシアHDとの統合を実現し、国内最大のドラッグストアグループとなりました。その結果、スケールメリットを活かしたコスト削減や海外展開の加速が可能となっています。
しかし一方で、利益率の低下や人件費・物流費の上昇、さらには調剤報酬改定など外部環境リスクが課題として残されています。したがって、効率的な経営体制の確立が今後の重要テーマとなるでしょう。
長期保有:売上は拡大基調であり、統合効果やPB強化による利益率改善が進めば、株価上昇余地も期待できます。優待制度も生活密着型で実用性が高く、長期保有に適した銘柄といえます。
戦略的選択:優待を活用しながら、統合効果や海外展開の進捗を定期的にチェックし、柔軟に判断することが現実的です。特に長期保有を前提に、財務改善や新規事業の拡充を見守る姿勢が望ましいでしょう。
参考
ツルハドラッグ:公式サイト
ツルハホールディングス:株主優待