自社株買いとは|配当と並ぶ注目の株主還元戦略

はじめに:株主還元を考えるうえで重要な施策

株価を評価する際には、利益や資産の効率性だけでなく「株主への還元姿勢」も大切です。代表的な株主還元策には配当がありますが、自社株買い(じしゃかぶがい)も同様に注目される施策です。株主にとっては株価上昇や1株あたり利益の増加につながるため、投資判断に欠かせないポイントになります。

自社株買いとは?

ズバリ、自社株買いとは「企業が市場から自社の株式を買い戻すこと」です。正式には「自己株式の取得」と呼ばれ、企業が自己資金を使って市場に流通している株式を買い戻します。

買い戻した株式は「消却(無効化)」されるか、「金庫株」として保管され、ストックオプションやM&Aの際に活用されることもあります。

企業が自社株買いを消却する場合としない場合の目的

区分消却する場合消却しない場合(金庫株)
株式数発行済株式数が減る → EPSが上昇発行済株式数は変わらない → EPSは変わらない
株価への影響需給改善+EPS増加で株価上昇効果が強い需給改善のみ → 株価上昇効果は限定的
株主還元姿勢強い株主還元の意思表示還元よりも戦略的活用の色合いが強い
利用目的株主価値向上、減配リスク低減ストックオプション付与、M&A対策などに活用可能
投資家の評価長期投資に安心感を与える戦略的だが株主還元効果はやや弱い

日本企業の自社株買いは近年急増しており、2025年には過去最高水準に達しています。

東証の改革要請(資本効率改善・ROE向上)を受けて、株主還元を強化する動きが広がっています。

※ROEについてはこちらの記事で紹介しています。

https://miyacci-yutaikabublog.com/2025/11/02/post-107/

その中で、「買い戻した株式を消却する」ケースが増加。これはEPSを確実に引き上げ、株主還元の姿勢を明確に示せるためです。

注意点

  • 発表直後は需給改善で株価が上昇しやすいですが、業績や成長力が伴わないと長期的な上昇は続きません
  • 過剰な自社株買いは現金を減らし、自己資本比率を低下させるため、財務が弱くなるリスクがあります
  • 自社株買いに資金を回すことで、設備投資や研究開発に使える資金が減る可能性があります
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  • 発行済株式の5%以上の買い戻しは強い株価上昇要因になるが、財務負担も大きくなる

自社株買いをしているお勧め企業

企業名(コード)還元策配当・優待の特徴ポイント総合利回り(目安)
三井住友FG(8316)自社株買い1,500億円(約1.3%)年間配当予想157円(増配発表)高配当+自社株買いの両立。総還元姿勢が明確約4.0%(配当利回り)+1.3%(買い戻し)=5.3%
みずほFG(8411)自社株買い2,000億円(約2.4%)高配当株(年間配当水準は安定的)財務基盤が強く、配当+買い戻しで株主還元約3.5%+2.4%=5.9%
三菱UFJFG(8306)自社株買い2,500億円(約1.08%)高配当株(年間配当は安定)金額は大きいが比率は小さめ。配当+買い戻しで還元約3.8%+1.1%=4.9%
オープンハウス(3288)自社株買い500万株(4.44%)全消却予定配当あり(利回りは中程度)自社株買い+配当で株主還元姿勢を強調約2.0%+4.4%=6.4%
シンクレイヤ(1724)自社株買い20万株(4.28%)消却予定配当あり(安定的)中型規模の買い戻し+配当で株主還元約2.5%+4.3%=6.8%

自社株買いをしている企業株をおすすめしたい理由

1. EPS(1株当たり利益)が増える

  • 株式数が減ることで、同じ利益でも 1株あたりの取り分が増える
  • EPS上昇は株価評価のプラス要因になりやすい。

2. 株価上昇の需給効果

  • 市場に出回る株式が減るため、需給が改善して株価が上がりやすい
  • 特に大型の自社株買いは短期的な株価上昇につながるケースが多い。

3. 株主還元姿勢の強さ

  • 「自社株が割安」と経営陣が判断しているサイン。
  • 株主に対して 還元を重視している企業姿勢を示すため、長期投資に安心感がある。

4. ROE(自己資本利益率)の改善

  • 自己資本が減ることで資本効率が上がり、投資家にとって魅力的な指標になる。

5. 配当との組み合わせで総還元力が高い

メガバンクやオープンハウスのように「高配当+自社株買い」を両立する企業は特に注目。

配当+自社株買いを同時に行う企業は、株主への総合的な還元力が強い

まとめ:自社株買いと株主還元の考え方

まず、自社株買いは企業が市場から自社株を買い戻すことであり、株式数を減らすことでEPSやROEを改善し、需給の引き締めによって株価を押し上げる効果があります。 さらに、消却を伴えば株主還元の姿勢がより明確になり、長期投資に安心感を与える点も魅力です。

一方で、過剰な自社株買いは財務体質を弱めたり、成長投資の機会を失わせたりするリスクもあります。したがって、投資判断においては買い戻しの規模や消却の有無、そして企業の財務健全性や成長戦略とのバランスを確認することが欠かせません。

最後に、配当と自社株買いを組み合わせることで株主への総還元力は一層高まります。 つまり、自社株買いは単独でも有効な株主還元策ですが、配当と併用することで企業の株主重視姿勢をより強く示すことができるのです。